マーケティングリサーチのスペシャリスト

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データベースマーケティングの“低くて高いハードル”

 現在、自社で保有する個人情報を基にお客様に直接コンタクトをする事ができる企業は無数にあると思います。しかしながら、お客様との頻繁なコミュニケーションを通じて相互に情報交換を図り、吸い上げたお客様のニーズを具体的なアクションにつなげている企業は実際にどれだけあるのでしょうか。せっかく貴重なデータベースを持ちながら一度もメンテナンスをすることなく、個人情報の取扱いに厳しい管理を求める“個人情報保護法”の下、第三者への情報漏洩などの危険を回避する意味からデータベースの廃棄を繰り返している企業も少なくないと伺っています。

 CDやDVDなどのレンタル・販売会社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(TSUTAYA)は、「顧客に的確なレコメンド(2)を行うノウハウを、多くの顧客情報を抱える企業に提供する」ことを事業目標の一つにおいていると聞きますし、ロイヤリティマーケティングが運営し、ローソンなどで展開している共通ポイントサービス“ポンタ”の事業コンセプトの背景にもそのような意図が反映されているように思えます。しかしながら、何れも発展途上にあると思われ、初期の目標達成が成されているかは定かではありません。一小売業者が取り扱える製品数に限りがあるにもかかわらず、移ろいやすい生活者の購買行動に振り回され“雨後のタケノコ”のごとく新商品がデータベースに流入してくる状況の中で、十分に時間と目的意識を持ってデータを解析する余裕はないのかも知れません。逆に、膨大なデータをメンテナンスするコストに対し経営管理上の制約が生まれることから、進歩的な“データベースマーケティング管理”が完成しづらいのでしょう。大きな発想の転換が必要かもしれません。

 あまりに多くの説明変数(3)が存在する為に、ひとつの新製品が売れるのか売れないのかを人間の頭で考えきるには限界があります。新製品やサービスの開発では、多変量解析(4)を用いたデータマイニングをはじめ、取るべき手段の最適化を示唆してくれる分析手法を駆使して“売れるモノ作り”の試行錯誤を繰り返してきたのではないでしょうか。しかし、残念なことにいまだに完全なアルゴリズムが発見されたというニュースを耳にしません。商品の購入履歴から、“購入者と商品”のシンプルな相関係数をもとにレコメンドをインプットするにとどまっています。

 25年前に日本に初めて“データベースマーケティング”を紹介された荒川先生は、「膨大なデータを持ちながらも宝の持ち腐れになり、本質的なデータベースマーケティングが展開できていない理由」を以下のように挙げていらっしゃいます。

 『この膨大な顧客データを活用している小売業はまれ。データを収集しているのに活用していないのが現実。 活用しない理由3つをあげてみる。
 1つは、そもそも数値に隠されている意味を読み込んで状況を把握しようとする"意志"がないこと。
 2つは、データが多すぎてじっくりデータを見る時間がないという理由。
 3つは、はじめて経験するデータなので何をどのように理解し、どのように行動すればよいか分からないという理由。

 従業員の意識の低さは"会社の意識"の低さが原因になっている。トップが率先しないことが大きな原因。データ活用は難しいことではない。はじめて自転車に乗ることと同じだ。自転車に乗れるようになるには朝夕お父さんやお兄さんの力を借りて一生懸命努力する。転んでも、転んでも何度も練習を繰り返す。この最初の努力がどうしても必要。あるとき不意に乗れるようになる。乗れるようになれば後は簡単。いつでもどこでも簡単に乗れるようになる。人の手を借りる必要もない。重要なことは「自転車に乗りたい」という強い願望。同じように「データを読み込めるようになりたい」という願望があればデータを使いこなせるようになる。データマイニングなど難しい統計分析手法は必要ない。「電卓で検算できる」という単純な情報を用いるだけで十分である。』

 今、CRMの実行にあたり“データベースマーケティング”に真剣に取り組んでいる企業の多くは、3つめの「何を、どのように理解し、どのように行動」すれば良いかがわからないがゆえに、成功のための変数の発見と因果関係の公式を描き出せずに膨大なデータベースを前に立ち尽くしているのではないでしょうか。

 


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