マーケティングリサーチのスペシャリスト

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2.耐久消費財の特徴

 耐久消費財には、いくつか共通する特徴がありますが、この特徴が、企業経営やマーケティングにとって重要な意味を持つことになります。ここでは、製品開発やマーケティングに大きな意味を持つ8つの主要な特徴を見ていきます。

(1)消費期間の長さ
 乗用車もテレビや冷蔵庫も、一度購入したら、何年間かは使い続けます。乗用車の平均代替サイクルは、かつては5年くらいでしたが、現在は7年くらいに伸びているようです。
 メーカー側も、製品開発や生産設備などに多額の開発投資を行います。これを回収するには長期間にわたって販売し続ける必要があります。
 このため、思い切った冒険が難しく、ヒット商品の追随型の製品や既存商品の改良型、あるいは機能網羅型の商品を生みがちです。

(2)ライフサイクル・コスト
 何年もの間使い続けるということは何を意味するのでしょう?
 自動車がよい例ですが、購入して3年後に車検が必要になります。年間走行距離の長い人なら、タイヤ交換などの部品交換が必要になります。他にも、定期的に必要なものに、ガソリンの給油、オイル交換があり、自動車税や自動車保険を毎年支払ことになります。また、事故にあえば補修が必要になります。
 パソコンは単体では十分な機能を発揮させることができません。プリンターやモデム、無線ルーター、外付けハードディスク、DVD/CDなどの外部記憶装置などさまざまな周辺機器を買い足したり、最新のものに買い替えたりします。ソフトウェアやアプリケーションも同様です。最新のOSウィンドウズ7に替えたり、アプリケーションソフトを購入、あるいは最新バージョンにアップグレードします。もちろん、修理が必要な場合もあります。
 このように耐久消費財には、ライフサイクルを通じて保有コストがかかるのが普通です。
 これは消費者にとって、購入時のコストのみならず、ライフサイクルを通じたコストが判断材料になることを意味します。
 逆に、メーカーや流通業者の視点に立てば、製品販売時の売上や収益のみならず、ライフサイクルを通じたキャッシュフローを設計することが大切であることが分かります。
 また、長期間使用し続けるため、商品のユーザビリティ(使いやすさ)も、非常に重要になります。操作性が悪いと感じたら、購入は見送られますし、仮に購入してもらえても高い満足度は期待できず次の購入はないでしょう。

(3)購入リスクの低減という購買行動
・購入リスクとは?
 購入時のイニシャルコストが高く、所有コストもかかることは購入者にとっての購入リスクが高いことを意味します。
 故障の頻度が高ければ、修理費がかかるだけでなく、利用できない時間が発生します。
 つまり、耐久消費財の場合、購入に際しての判断基準が厳しい傾向にあり、衝動的な購入や試し買いはあまり期待できません。(ただし製品価格が数万円レベルまでのデザイン性の高い耐久消費財の場合は別です)スナック菓子やドリンク類などと違い、デザインや味、パッケージが新鮮だからといって試し買いしてくれることは一般に期待できません。

・購入リスクの回避行動
 消費者は購買行動において購入リスクを最小化する選択を行います。つまり、
 ・過去に満足度が高かった製品やメーカー
 ・評判(レピュテーション)や評価の高い製品やメーカー
 ・イメージのよい製品やメーカー
 から選択しようとする傾向があります。
 満足度やレピュテーション、製品や企業のイメージは、消費者の論理的な購入リスクを下げ、買い安心感を高める働きかけをします。
 このため、既購入者に対する満足度調査、消費者全般に対する製品や企業のイメージ調査などを定期的にモニタリングし、問題があれば対策を打つ必要があります。また、イメージ向上や満足度向上は、企業にとって重要な経営戦略に位置付けられます。

・満足度、レピュテーション、リテンション(ブランド・ロイヤルティ)
 実際の使用経験に基づく、製品やメーカー、販売店に対する満足度が、次も同じ製品あるいは同じメーカーの製品を買う大きな動機になります。メーカーや流通の側から見れば、カスタマー・リテンションであり、ユーザーの側からはブランドへの忠誠心、すなわちブランド・ロイヤルティです。
 レピュテーションは、メーカーや製品に対する世間一般の評判です。専門誌による評価、口コミ、ウェブ上のブログやソーシャルサイトなどの情報から形成されていきます。製品やメーカーの評判が高ければ、購入に対する障壁(不安感など)が大きく下がり、結果として選択されやすくなります。
 レピュテーションは、かつては、主として製品品質、それも耐久性や故障しにくさ、対価価値の高さに起因していました。今日では、製品機能、デザイン、快適性、安全性、コンプライアンス、環境対応、そしてメーカーの社会貢献活動まで、レピュテーションの形成要因は多岐にわたっています。

(4)製品イメージ
 耐久消費財の中には、購入者が自己イメージを投影しやすい製品があります。自動車や、携帯電話、ポータブル・オーディオ・プレイヤー、腕時計など、消費者の社会的活動の中で使用する機会の多い商品です。
 ベントレーやランボルギーニのような高級車、オーデマ・ピゲやパテック・フィリップなどの高級時計、超高級携帯ヴァーチュなどは、その希少性や高価格性ゆえに、所有者がどういう人物であるかを示すある種のシンボルとなります。また、同じ車でもスポーツカーを持つことは、その人にとって走る喜びを得る手段であるとともに、ステートメント(自分の価値観や主義の主張)になっています。
 シンボルやステートメントは、言語外言語であり、 言葉同様に共通の意味づけがされていますが、時代により意味づけが変化します。かつて高級車は、ステータス・シンボルとされていましたが、今日ではその意味は弱まっています。
 そうしたシンボルやステートメントの役割を果たす製品の場合、製品イメージがたいへん重要になります。製品に対するイメージが広く共有されているからこそ、その製品を所有することがステートメントやシンボルになりえるからです。
 こうした商品の場合、購入者にとってウィンドウショッピングから始まり保有期間を通じてのトータル・オーナーシップ・エクスペリエンス(保有期間中のその商品にまつわるすべての体験)が満足度に多大な影響を与えます。高価な宝飾品やブランド品の満足度は、商品に対する満足度のみでなく、どのようなロケーションのどのような雰囲気の店舗で売られているか、どのような店員がどのような服装でどのような接客サービスで応対するかが重要な役割を演じます。高級ブランドが、優良顧客や優良見込み客向けに新商品の発表プロモーションを行う際、リッツカールトンやマンダリン・オリエンタルのような超一流ホテルで開催するのは、それもまた購入者にとってのブランド保有価値のひとつだからです。
 消費者へのコミュニケーションを通じてイメージを演出することは、マーケティング上の重要な仕事ですが、コミュニケーションは広告宣伝のようなマスメディアを通じたものに限らず、ありとあらゆる販売活動で行われているのです。

(5)中古市場の存在
 耐久消費財の多くの製品では、セカンド・マーケット、すなわち中古品の市場が形成されています。
 垂直統合が進んでいる自動車業界では、この再販市場をも収益の源泉としています。単に下取りした中古車の販売を収益源のひとつにするというだけでなく、保有車の下取り価格を保証することで代替を促します。たとえば3年後の新車の残価を設定し販売価格と残価の差分のみをローンの対象とする残価設定型ローンのようなファイナンスプログラムを提供することで、新車を買いやすくしています。
 不動産の場合も、住宅の買い替え・住み替えがあり、買い取り業者、販売委託業者、住宅ローンを提供する金融機関などさまざまな会社がサービスを提供しています。

(6)ファイナンス
 耐久消費財の場合、金額が高価なこと、使用可能期間が長いこと、転売が見込めることからファイナンスの仕組みが用意されています。ローンによる割賦販売、個人向けリースといったものです。ファイナンスは、銀行や信販会社によって提供されます。住宅ローンや自動車ローンがそのよい例です。
 自動車の場合、ローン金利の一部をメーカーが補助することで期間限定の低金利ローンを提供することが、販売促進策のひとつとして広く行われています。家電量販店やテレビショッピングでも、分割払いの金利や手数料を店舗が負担という販売促進策が行われています。

(7)アフターセールスサービス
 長期間使用する製品の場合、相談や修理・交換などのトラブルがあった際の迅速な対応、購入後の保証期間の長さ、保証範囲の広さが重要です。また、修理に要する費用や、部品交換頻度の少なさ、交換部品や工賃の安さもポイントになります。
 輸入車の場合、修理費用が高いというイメージが定着し購入阻害要因のひとつになっているため、最初の車検までの3年間のメンテナンスフリー(消耗部品交換や定期点検を無償で行う)のパッケージをつけているメーカーがあります。これも購入を後押しする有効な販売促進策です。

(8)購入の契機と動機づけ
 高価な商品になるほど、衝動買いや試し買いはなくなります。すなわち、新規購入にせよ、代替にせよ、動機や契機が必須になってきます。
 買い替える契機は、さまざまです。
 家族構成の変化や転居によるニーズの変化が契機になることもあれば、ボーナスや臨時収入、あるいは政府の政策(家電エコポイントやエコカー減税)、友人や知人の薦めなどがきっかけになることもあります。もちろん、高額な修理が必要になる重大な故障が発生したり、車検の到来なども契機になります。
 ただ、買い替えの契機を迎えたからといって、買い替えてくれるという保証はありません。一般に、景気が悪ければ、生活防衛的な消費になりますので、高額な耐久消費財の購入には消極的になります。つまり、代替契機を迎えた消費者の中から実際の代替需要が発生する確率が低くなります。

 


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