マーケティングリサーチのスペシャリスト

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3.商品の特性と購入者の心理

(1)商品属性のピラミッド
<コモディティ型耐久消費財の場合>
 耐久消費財にも、商品ごとの特徴がほとんどなく、商品差別化が難しいコモディティ型商品があります。ハードディスクドライブなども機能やデザインに大差がなく、顧客もそうした付加価値を特に重視しないなら、耐久性、信頼性、安全性といった基本的な品質と価格が重要な選択基準になります。
<機能重視型の耐久消費財の場合>
 商品にはさまざまな特徴(属性)があります。
 消費者は、家電製品なら数万円〜数十万円、一般の乗用車なら百万円超とかなりの金額を支払うことから、事前にさまざまな検討を行います。
 パソコンはどちらかといえば、機能性を中心に合理的な選択基準で選択する人が多い商品です。自分が求めている機能や特徴を充たしている商品を選択するわけです。
<合理的選択の割合が高い商品>
 パソコンがこの例です。
 ラップトップかデスクトップか、CPU、内蔵メモリー、内蔵ハードディスクの容量、クロックスピード、ディスプレイのサイズやスロットの数、無線LANカードの有無など機能面が主な選択基準になります。
 もちろん、初心者やライトユーザーを中心に、メーカーのブランドイメージやデザイン、色などで選ぶ方もいます。
<イメージ重視型の商品>
 逆に、宝石の場合は、機能性で選ぶ方は殆どいないでしょう。デザインの美しさ、ブランドイメージやブランドに関わる物語、どんな顧客が贔屓にしているか、販売店の豪華な内装や店員の丁重な接客、そういったモノとしての商品を超えたところに価値を見出します。
 その中間の商品もあります。時計や自動車がそうです。
 例えば、時計の場合、時間を見る道具として捉えることも、装飾品として捉えることも、ファッションの小道具として捉えることもできます。価格も数百円で購入できるものから、永久カレンダーやトゥールビヨン機構を備えた数百万円〜数千万円のもの、さらには大粒のダイヤモンドを散りばめた数億円の宝飾時計まであります。
 (※トゥールビヨン機構とは、機械式時計に搭載される機構の一つで、時計の置き方による精度の狂いで生じる「姿勢差」を克服するために発明された特殊な脱進機のことをいう)

・商品属性のピラミッドと対価価値
 このように商品にはさまざまな特徴があり、商品あるいは購入者によりどの特徴を重視するかが異なります。
  購入者は最終的にはお金を払って商品を購入することになります。このため、価格を払うだけの価値があるかを最後は判断して購入することになります。
  これを対価価値と呼びます。

 

(2)商品属性のトレードオフと優先順位
 商品の特徴(属性)の中には、一方をとれば他方が犠牲になるという背反性を持つ特徴があります。例えば、自動車の高出力エンジンと燃費、スポーティな流線形のデザインと室内居住性や実用性(トランクスペースなど)です。携帯電話であれば多機能性と使いやすさは背反関係にありますし、家具であれば装飾性の高さとメンテナンスのしやすさは背反関係の一例です。
 このように明確なトレードオフ関係にある場合、消費者は自分にとっての価値や優先順位をある程度明確に意識しています。従って、比較的簡単なインタビュー調査やアンケート調査などでも、信頼できる回答が得られます。
 一方、商品属性の中には、互いに独立な関係にあるものもあります。
 自動車の例をとれば、内装デザインと燃費、乗降性とトランクスペースはほとんど関係ありません。時計の場合であれば、デザインと時間の正確さは関係ありません(ただしクロノグラフなどのように正確さ・精密さを印象づけるデザインをすることも多く、感情レベルでは相関する関係にあります)
 このような相互に独立した商品属性の場合、消費者は必ずしも自身の選択基準を明確に意識しているとは限りません。このため、マーケティングリサーチでは、コンジョイント分析などを用いて、意識下にある商品属性の優先順位を測定し、商品開発に活かしていきます。 

 

(3)受容価格と価格弾力性
 高価な商品に対しては、購入者側にはその人の価値観や経済事情に基づく予算があります。
 どんなによいと思っても、予算を大きく超えて購入することはまずありません。逆に事前に考えている予算よりも大きく下回る場合、「訳あり商品」で何か問題があるのではないかと疑って購入を見合わせたり、それならひとつ上のグレードの商品を買おうかと考える人が現れます。
 つまり、消費者の頭の中には、商品に応じてその人にとって受け入れられる価格がある程度設定されています。
 これを受容価格帯と呼びます。
 受容価格帯は、競合商品の価格や類似商品の価格、同一メーカーの商品ラインアップの前後に位置する商品の価格に対する意識によって形成されます。
 ある価格、たとえば新型3Dプラズマテレビを家電販売店の店頭で43万円で販売したとします。43万円を高すぎると思う人 - つまり、受容価格帯外の人 - が多ければ需要は伸びません。
 同じ商品が38万円、33万円、そして28万円とより安価に価格設定されたらどうでしょうか?安価になるにつれて、より多くの消費者の受容価格帯に入ってきます。その結果、市場全体での購買欲求が高まり、より多くの販売が見込めることになります。
 このように価格に応じて、需要が変化する関係を価格弾力性といいます。
 一般に、価格弾力性は、受容価格帯の中では、価格が安くなるほど購入者が増えるという関係になります。

 

 価格弾力性や価格受容帯は、過去の販売データから算出することも、市場調査を元に算出することも可能です。

(4)中古市場と転売価値(下取り価格)
 多くの耐久消費財には中古市場が存在し、垂直統合が進んでいる業界(自動車業界など)では、メーカーが中古市場もコントロールしていることは先に述べた通りです。中古市場をコントロールすることにより、中古製品の販売による2次収益の機会を得るとともに、商品価値の経年劣化を下支えし、新品商品の価値を維持することができます。
 定価300万円の自動車を購入しても、購入後3年経過後の市場価値が50%しか下がらなければ、実質的に150万円で購入したことになり、購入に際しての障壁が下がります。

 


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