マーケティングリサーチのスペシャリスト

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定量調査の結果との違いをどう読むか

 グループインタビューなどの定性調査を実施すると、ときとして定量調査とまったく違う答えが出てくることがあります。そういったときには、どの対象者がどのような前提でその発言をしたかということに着目することが重要です。

 この件に関して過去の事例を2つほどご紹介したいと思います。いずれも商品コンセプトの評価を調査対象者にしてもらったときに発生した定量調査と定性調査での評価の違いの例です。最終的にどのような判断を下したか、それは皆さんのご想像にお任せするとして、商品が世に出てからの判断は、両方のケースともに定性調査の結果に軍配があがりました。30年のリサーチ経験の中で、筆者も多くの成功、失敗両面の経験をしていますが、今でも定量調査と定性調査の結果に違いが出たときには相当のエネルギーをその判断に使います。簡単なことではありませんが、発言者の声に注意深く耳を傾けることで多くのヒントが見えてきます。

【20年前の使い捨てコンタクトレンズの受容性:新規カテゴリー商品導入時の注意点】

 先ず、当時のコンタクトレンズユーザーのほとんどはおしゃれを気にする若い女性でした。使い捨てレンズも当然若い女性が主なターゲットユーザーだと考えられていましたし、定量調査の結果も“女性の受容性が高い”というものでした。ところが、発売前に広告のコミュニケーションコンセプトを作成するためにグループインタビューを実施したところ、「女性ユーザーは毎日手入れをすることに不便を感じているものの、余分にお金を払うほどの不便を感じているわけではなく、そのようなものにお金をかけるくらいなら新しいバッグを買いたい」という意見が主流を占めました。一方で男性は、「現在のコンタクトレンズは手入れが面倒だから使わない、使い捨てコンタクトレンズなら多少のお金がかかっても使いたい」といった、便宜性に対し費用とのトレードオフができるという明確なメッセージが主流を占めました。

 この結果通り、市場投入直後は使い捨てコンタクトレンズのユーザーのほとんどが男性でした。定量調査では、コンタクトレンズユーザーの中で不便を感じる人の率は男女でほとんど差はありませんでしたが、どの程度の不便さかは定量調査では十分に測れなかったということです。また、定量調査の結果を詳細に分析したところ、コンタクトレンズユーザーと非ユーザーの間での使い捨てコンタクトレンズの利用意向の差は、ユーザーにおいて圧倒的に高い結果が出ていた事が判りました。結局、コンタクトレンズの非ユーザーの意見は、ユーザーの意見に比べ、実体験や商品知識そのものに大きなレベルの差があり、定量調査で説明したコンセプトの意味を十分に理解されないまま回答されていたというデータ上の落とし穴があったのです。グループインタビューでは参加者のひとりひとりが十分に商品の内容やベネフィットを理解した上で意見を確認できるため、より現実的で正確な意見が聴取できたということかと思います。

【既存商品のリニューアルパッケージ開発:商品リニューアル時の注意点】

 ロングセラーの人気商品も競合商品の発売などによって売り上げが伸び悩み、商品リニューアルをすることで目先を変え、売上げを維持することを考えることが多くあるかと思います。あるソフトドリンク製品のパッケージリニューアルにあたり、その商品のユーザーと非ユーザー100名ずつを会場調査に呼んで新しく開発したパッケージの評価を行ったところ、ほとんどが良い評価を下し、リニューアル発売に問題なしとの結論がでました。この結果を受け、リニューアル発売販促コンセプトの受容性を明確にする目的でユーザー、非ユーザーの2グループを対象にグループインタビューを実施しました。ところが、この定性調査では、ユーザーからも非ユーザーからもリニューアルした新パッケージは酷評されました。その結果に大きな戸惑いを受けると共に、定量調査の結果を優先するのか、定性調査の結果を優先するのか、大きな議論になりました。

 グループインタビュー(定性調査)の弱点は意見を収集する人の絶対数が少ないため、出てきた意見が市場を代表していない偏ったものになることもありますし、他のグループインタビュー参加者が大きな声で意見を述べる特定の人の意見に左右されやすいというものもあります(もちろんその欠点を補うためのさまざまな技術や手法が開発され、最近ではそのような議論はなされなくなってきています)。一方、定量調査では、「好きか?/嫌いか?」、或いは「買いたいか?/買いたくないのか?」を単純に数値化出来るため、その好き嫌いの微妙なニュアンスの違いを十分に把握しきれないことがあります。ほとんどの大型マス商品については定量の結果で十分に判断ができますが、この例のように定性調査でまったく違う結果が出た場合の決断の下し方は非常に難解です。このときにリニューアル商品に対して市場が下した結果は定性調査の結論と同じでした。つまり、ソフトドリンクは味が重要であるという建前が会場での定量調査では優先されましたが、グループインタビューでは、「かっこいいパッケージを机に置きたい/皆に見せたい」という本音が見えて、パッケージに対するこだわり度合いが明確になったということでした。ソフトドリンクは味のレベルはもちろん、使用者にとって意味のある/満足できるパッケージであることが重要であることが定性調査で改めて確認されたということです。ユーザーが選ぶパッケージは自分の考え方やスタイルの代弁者の役割も果たしていたのですね。

 


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