マーケティングリサーチのスペシャリスト

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今こそ、“マーケティングの見える化”を実現

執筆者:株式会社ユーティル 取締役最高顧問  宇田川 信雄(うだがわ のぶお)

 

 100年に一度の経済危機の中に潜むビジネス機会を効率的・効果的取り込み最良の事業結果に結びつけるために、研ぎ澄まされた経営センスと共に、より一層の上質感がマーケティング活動全般に求められています。モノが売れない時代だからこそ企業論理優先から顧客視点の経営管理への転換に迫られ、「マーケティング活動の見える化」がより重要となるのです。"見える化"によって、関係者一同が経営環境情報の共有、経営戦略に対する市場の反応、経営目標の進捗状況が把握でき、また同時に、関係者全員で知恵を出し合える場が生まれます。「マーケティング活動の見える化」に欠かせないマーケティングリサーチの役割を、32年の外資系マーケティングの実戦経験から紹介します。

 



先の見えない経営環境とマーケティング管理

 2008年秋に起こった、サブプライムローンの破綻をきっかけに米国で発生した企業ベースでの金融危機が2010年に入りユーロ圏のギリシャやスペイン、ポルトガルという国家レベルでの金融危機へ拡大し、世界的な金融不安が進行しています。国家を担保とした信用度の高い金融商品もが信じられなくなったグローバル経済は何処に行ってしまうのでしょうか。また、日本丸の先頭にたって日本のグローバル・ポジションを支えてきた“The Japanese Brand”のトヨタが米国マーケットであの様な挫折を経験することを誰が予測していたでしょうか?今回のように、想像を超えた経営環境の中で経験する試練や課題がその後の更なる成長に結びつけば宜しいのですが、その”判断と決断“を一歩間違えると企業の屋台骨全体を揺るがしかねない惨事へと発展しかねません。

 日本国内に目を向けると、6月2日に流れた「鳩山首相と小沢幹事長の辞任」の発表への反応を見ても分かりますが、この衝撃的なニュースを受けても株価や為替は一瞬動いただけで元に戻り、また、4日に次の首相として民主党の菅直人氏が選出されましたが、株式・為替ともに市場の反応は限定的に止まり、金融経済と実社会とのアンバランスさが顕著な状況を示し、2010年後半の経営環境にも多くの不透明感が漂っています。この環境化、計算されたリスクを最小にとどめ、100年に一度の経済危機の中に潜む新たな機会を取り込み、事業(マーケティング)活動をより効率的・効果的に結果に結びつけていくには、研ぎ澄まされた経営センスと共に、より一層の上質なマーケティング管理が求められます。

 ところが、毎日のようにニュースで報道される、今までの日本社会では考えられなかったような悲惨な事件や事故、或いは想像以上に早く始まった日本のグローバル・ポジションの低下、そして、北京オリンピックや上海万博で繁栄を謳歌する隣国、中国の変貌を目の当たりにして、多くの方々が「自分たちの生活観を超えた日本人の変化や行動」と「国際社会の中の日本の位置づけの変化」に驚いているのではないでしょうか。今までの経験や勘には頼れなくなり、また、今までに行われてきた、人任せの「社会潮流の読み」、「市場分析」そして「生活者心理・行動分析」で上質な経営・マーケティング管理が出来なくなっています。現代経営のキーワードの一つ、計算されたリスクの最小化と顕在・潜在する事業機会の最大化は、「総てを顧客視点で考える」というマーケティング管理の原点に立ち返ることで始まると考えます。また、これを経営者自らが率先して行かねばならないのです。



普遍の事業目的である持続的な利益の確保を支えるマーケティング

さて、企業の目的は持続的な成長の中で達成される利益の恒常的創出であり、これによって企業はその社会的責任を果たすことが可能となります。利益を出すためには出来るだけ多くの売上の確保と、適正なコストと経費管理が必要になります。コスト・経費を厳しく管理することで利益を向上させる手段もありますが、より積極的な展開には売上の向上が必須事項でしょう。売上を上げるにはどうしたらよいのでしょうか?非常に簡単な公式ですが、売上の向上は(1)既存購買者数の維持と新規購買者の獲得、(2)購入者一人当たりの購入個数と購入頻度の増加、そしてB販売価格の値上げ、でしかありません。この公式を効率的に、そして計算された管理で実現させる手段が“顧客視点のマーケティング管理”だと考えます。

 アメリカマーケティング協会では1985年に「マーケティングとは、個人と、組織の目標を達成する手段を創造するため、製品/製品アイデア開発、価格、広告/プロモーション、そして流通を計画・実行するプロセスである」と定め、2004年には「マーケティングとは、組織と利害関係者にとっての利益となるように、顧客に対する価値を創造・伝達・提供し、顧客との関係を管理するために行われる組織的な活動とその一連の過程である。」と改定し、マーケティング活動における顧客との関係を強調しています。私は、『マーケティング活動とは、個人と組織が利益を適正かつ持続的に確保するために、お客様を知る事に始まり、お客様の満足を創造し続けるプロセス』と解釈しています。私にとってのマーケティング管理は、常に顧客視点が原点になり、その為にマーケティングリサーチが絶対的な位置づけになるのです。マーケティング活動の意味は顧客の満足度を高めるためにあり、顧客の視点で事業プロセスや組織を回すことと考えています。企業として市場や顧客の動向を捉えどの方向に向かうのかを考え、ターゲット層のニーズや欲求、そして市場に潜在する新たな機会を分析・理解し、事業の軸として経営・マーケティング戦略を立て実行していくのです。

 インターネットの目覚しい普及に始まり、ブロードバンド時代の到来とともに変貌し続ける生活者行動を事業経営に反映させるには、先ほども述べましたが、今までのように開発者や経営者の経験と勘に頼った意思決定では難しいでしょう。新しい時代に対応した新たな価値の創造や企業価値の拡大のために常に市場と顧客に目を向けた正しい判断が求められているのです。過去の成功事例をベースにした経営・マーケティング戦略では、複雑で多種雑多な生活環境に生きる生活者の欲求に応えた商品・サービスの創造は難しいでしょう。より豊かな価値を追求する、生活者自身が表現できない欲求への答えが求められているのです。この領域の責務を担っているのがマーケティングリサーチなのです。

 私は、大学卒業後32年間にわたり、米国を基盤とする多国籍企業のマーケティングと経営に従事してまいりました。そこでは多種多様な消費財カテゴリーと世界のトップブランドのマーケティング管理を経験して来ましたが、常にマーケティング上の判断と決断を助けてくれたのが20代後半から10数年にわたり経験したマーケティングリサーチのバックグラウンドでした。また、そこで学んだ多くのビジネス経験の中でも、欧米経営者のマーケティング活動に対する接し方、取り分け、マーケティングリサーチに対する関心の高さと自分自身で理解しようとする態度には学ぶべきものが多かったと思います。彼らは経営判断をする上で、経営ツールとして売上/顧客データ分析、そして経営分析手段としてのマーケティングリサーチを非常に重視していました。今回は、企業経営、とりわけ、マーケティング管理上で重要なポジションにあるマーケティングリサーチの意味と価値について話をさせていただきます。先ずはマーケティングリサーチの一般的な役割です。

 



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