マーケティングリサーチのスペシャリスト

メニュー:コラム 第3回
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売場でいかに商品を想起させることができるか、これがポイントである

 例えば、塩のように、似たような商品パッケージが複数並んでいることがよくあります。しかし多くのお客様には、商品をぱっとみた瞬間、そこはひとつの塊(塩)にしか見えないのです。でも実際の売場では、リーズナブルなものから、プレミアムな塩までいろいろな種類の塩が展開されています。ところがお客様にとっては、単なる「塩」としか認識されない。なぜなら、過去の経験から、プレミアムな塩があるという認識を持っていない人が多いからです。そうなると、多くのお客様にはプレミアムは、「特別なものとしてではなく、単なる高い物」で終わってしまうのです。

 そこで、塩の売り場にサブカテゴリーを作り、グルーピングして訴求してみます。すると、サブカテゴリーへの興味度合いが高くなり、また、流通側にとっても消費者が認識する商品カテゴリーが増えることになり、検討率が高まる結果が見られます。売場ではモザイク画をイメージすると良いのです。モザイク画は近くで見ると、複数の色の要素がそれぞれに主張してしまい、その情報から全体を理解することは難しいものです。しかし、遠くから見ると、一つひとつの形がわかる。つまり、売場もカテゴリー区分などをうまく活用することで、購買者に売場を直感的に理解させる(意識させる)ことができるのです。だからこそ、購買者に短期間で訴求していくためにも、サブカテゴリーなどをしっかり作り、訴求するものを明確化することが非常に重要なことといえます。

 また、購買者のニーズを売場で顕在化させていくことも重要です。逆に言うと、売り場しだいでは購買者のニーズが更に顕在化していくのです。

 4〜5年前の調査での経験ですが、液晶テレビの売り場は商品をインチサイズ別に並べることが一般的でした。インチサイズ別に並べること自体は良いと思われますが、「液晶テレビを売る」といった観点からは問題がありました。当時は、フルスペックハイビジョンの液晶テレビが出始めた頃で、各社数台をラインナップし、その価格もスタンダードの液晶テレビと比べ10万円くらいの差がありました。

 ここでのポイントは、多くの消費者は店頭で「フルハイビジョン」という意識を持っておらず、プラズマ、或いは、液晶テレビという概念でしかなかったのです。そうすると、中には興味を持つ人がいますが、大半の人は“フルハイビジョンテレビ=単なる高いもの”としての理解しかなく、購買の対象から排除してしまっていたのです。なぜかというと、多数のスタンダードテレビにまぎれて展示されるフルハイビジョンテレビは知識やイメージのない購買者にとっては、単なる少数派の商品にしか映らなかったのです。しかし、流通側もメーカーも高い商品を売りたい。だから、店員にフルハイビジョンの接客の強化を指導するわけですが、購買者に興味がないものをすすめても彼らの反応はなく、そんな話を聞きたくないと、シャットアウト(耳を塞いで)してしまうのです。

 そこでどのように対応したかというと、先ずはフルハイビジョンのものだけで集合させてみました。そうすると、意外に大きなコーナーができるので、それをみた購買者には「こんなに並べてあるのはなぜだろう」という意識が生まれ、さらに主流感も感じやすく「これはいいのかな?」という意識が生まれてくる。そうして、店員が積極的に接客する前に購買者から質問が出始めるという結果がでたのです。

 購買者に「これならいい」と納得させることは、本来は接客術で行われることが多いのです。しかし、購買者が興味を持つ前に無理やり押し付けても、拒絶されてしまう。こういうケースは、結構多いのです。だからこそ、どういう形で興味を持たせていくか、そのためにどうやって店頭で主流感を作っていくかが、非常に重要になってくるのです。

 



店頭では、短時間で商品特徴を刷り込ませる

 さて、“決め打ち”で買っていく商品を買いに来たからといって、入店の際に、購買者は必ずしもお目当ての売場だけを見てみようと思っているわけではないのです。店に入れば、売場に行き着くまでに、様々な売場に接する機会が生じるのです。そこで、この段階でいかに商品や売場に興味を引く仕組みを作るかが重要になってきます。その際に必要なのが店頭ツールです。

 例えば、ある商品を店頭で検討する時間を計ってみると、数10秒かけて検討するのは、興味を持った商品くらいです。興味のないものは数秒で終わってしまいます。従って、この数秒でいかに消費者の心を引き止めるかが大事になってきます。

 また、エンド陳列での検討時間も、平均10数秒程度なのです。そうなってくると、店頭では、短時間で消費者に商品理解をさせるサイン型POPか、商品の説明をじっくりと読んで理解してもらうコミュニケーション型POPを使い分けることが重要となってきます。

 例えば、デジタルサイネージの1種である“TVモニター”は、サイン型広告の顕著なものといえます。ただし、モニターといっても、音が出るケースと出ないケースでは、その媒体としての効果に大きな違いが出てきます。

 (※エンド陳列: コンビニやスーパーマーケットの店内にある陳列棚の両端のことをいい、お客様の目に止まりやすいことから様々な販促プログラムが実施されるスペース)

 コミュニケーション型POPは、購買者が能動的に情報収集としようとしている状態では良いのですが、店頭での消費者の心理の大部分は受動的な状態であることが多いものです。そうなると、どんなコミュニケーション型のPOPをたくさん設置しても、興味を持つ前に検討が終わってしまうケースが多くなってしまいます。商品説明をするデジタルサイネージ等に効果がないのは、受動的心理状況の消費者に無理やり見せようとするからなのです。

 もうひとつの重要なポイントは、短時間で消費者に商品の特徴を刷り込ませることが出来るかどうかということです。ある商品の発売時期に、(1)テキスト中心に商品の特徴を語ったPOPと、(2)イラストや写真を使い言葉を少なめにしてその商品の特徴を(イメージさせて)見せた POPを使い、同じ商品で試してみました。これらを検討した人のうち何割が買っていったかという結果では、前者(1)の場合、検討者の15%が購買、後者 (2)は35%が購買に至りました。これを売上げに直すと、だいたい2倍になりました。また、それらの検討時間でも、前者の場合、買った人の平均検討時間は約40秒、そして、後者の場合は21秒という結果になりました。つまり、どんなに良い商品やサービスでも、購買者がわかりやすいようにしないと、彼らにスルーされてしまうということです。CMが少なくなってきている昨今は、なおさらそういう結果になってくるのです。

 購買者の検討時間は、全体的にみて短くなる傾向にあります。だからこそ、直感的に感じ取れる売場が重要なのです。そのためにも、購買者に商品特徴を端的にイメージ(想起)させるツールやパッケージが必要となってきます。

 



消費者の状況にあったコミュニケーションを

 また、実際の購買者の立ち位置や待ち時間の心の余裕などが重要になってくるケースもあります。例えば、銀行のATMのコーナーで2〜3番目に並んでいるとき、人はどのような行動をするのでしょうか。ほとんどの人がどこのATMが空くのかで頭がいっぱいになっています。そんな人にPOPを見てくれと言っても無駄なのです。また、逆にガラガラだと、先ずは用事を済ませることに集中してしまいます。つまり、ATMへ一目散に向かうのです。順番を待っている人を観察し続けると、7〜8番目以降の人は、キョロキョロと落ち着きがなく、色々なところに視線が向かいやすい。つまり、心の余裕があるということです。となると、彼らから見える位置でPOPやツールを展開していく事が、ひとつの戦略になることも有り得るのです。

 このように、購買者の行動を客観的に詳しく観察、そして分析することで、「どういった顧客層に興味を持ってもらっているのか」、「どういったPOPが購買時に見られているのか」、「どういった購買者が買ってくれないのか」といった基本的情報収集にとどまらず、店頭での売り方に関しても即効性のある解決策を見出すことのできるパワフルなツールとなり得るのです。

 



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