マーケティングリサーチのスペシャリスト

メニュー:コラム 第7回
[*]前へ 
消費者の購買行動に沿ったリサーチを組み立てる

 新商品開発におけるリサーチの質問項目はある程度定番化されています。その中でも購入意向と好意度・魅力度と合わせて、目新しさや第一印象のデータが大事だと書いてきましたが、リサーチ質問項目の設定以外に、もう一つ大切なことがあります。

 それは、売場で実際に起きている消費者の行動を念頭に入れてリサーチを設計しないと、結果的に自己満足を達成しただけの新商品開発に陥りかねないという事です。言い換えれば、消費者の購買プロセスを意識したうえでリサーチ設計を行うべきであるということです。現在開発している商品を“より成功裏に売れる完成度の高い商品にしたい”という意識が勝ってしまい、ついつい、開発中の自社商品(製品)にばかり注目したリサーチを実施してしまいがちです。開発中の試作品(2〜3品)だけを見せて評価してもらう、或いは、競合品の中から2〜3品(場合によっては1品のみ)を選び出して、それとの比較で優位に立てているかという視点での評価をしがちです。

 開発の初期段階ではこれでも良いと思うのですが、開発も中盤に差し掛かった段階ではどうでしょうか?よく考えてみてください。消費者が、店頭で新商品に注目をする、また、手にとってくれるまでにはある一定の思考プロセスがあります。ところが、リサーチではそのプロセスを端折ってしまう、つまり“注目される以前”の環境下でのリサーチを行なわず、“注目されて以降”の環境下でしかリサーチが実施されていないケースが多く見受けられます。
(※注目される以前/以降: 前項の「ケース4」の説明を参照してください。言い換えると、“気付きの前後”ということ。)

 もちろん、開発中の商品を製品仕様別に評価してもらい、それをもとに改良や変更をするためには、主に開発中の商品(製品)に注目してリサーチすることは必要です。ただし、それだけでは十分ではなく、市場(売場)での競争力をチェックするための項目を、少なくとも開発後期の段階ではリサーチの中に仕組んでおく必要があると考えます。

 商品カテゴリーによっても組立て方は変わりますが、コンビニなどで販売している一般消費財の場合は、以下のようなプロセスを推奨します。

 もちろん、TVなどのマスメディア広告やWEB広告、店頭での販売促進などが新商品の認知・興味・購入意欲を喚起するために投入されていくわけですが、先ずは商品単体でどの程度の商品力(吸引力)があるのかを純粋に図っておくのが重要だと考えます。

 



リサーチを鵜呑みにしすぎない、自分たちの感性や思い入れの大切さ

 ところで、“リサーチをすればするほど角が取れて特徴のない商品になってしまう”、という声を聞くことがありますが、この意見には一理あります。私も実際にリサーチ管理をしていて、当初斬新な開発案だったものが、リサーチを重ねリサーチ結果を反映するに従って商品の完成度が増す一方、だんだんと角が取れ、売れ筋の競合商品に近づいていくのを目の当たりにすることがあります。これは、リサーチ結果を鵜呑みにして次のステップに入っていった結果だと思います。

 なぜリサーチ結果を鵜呑みにすると特徴のない商品になりがちなのでしょうか?メーカーの商品開発担当やリサーチ担当の方から聞いたのですが、「開発責任者がリスク回避のために評価の悪い点を優先的に、かつ、消費者の望むように改良していくことがあり、これを積み重ねていくと開発初期の“際立ち感”がなくなり、出来は良いが特徴のない商品」になってしまいがちとの事です。

 また、商品開発の最終段階を除き、開発途中の商品であるがゆえに“機密情報の漏えい防止”を前提にメーカー名やブランド名を明かさないでリサーチを行なっていることが影響しているかもしれません。これによって、特定のメーカーやブランドから新発売される商品という視座に立っての評価はどうしても薄れてしまい、商品カテゴリー全般から見た消費者の判断になりがちです。メーカー力やブランド力が反映されないのです。結果として、どのメーカーがリサーチを行なっても、目指すべき方向性が類似してくるという事態が発生してしまうのです。

 これは自動車(乗用車)の例ですが、ある車種の開発調査で被験者からデザイン面で特定の2か所についてのみ、“好きな点と嫌いな点”の両方で圧倒的に多くの意見が出されました。1つはテールランプのデザイン、もうひとつはドアミラーのデザインでした。そこで、嫌いと回答した人にどう改良して欲しいのか意見を求めたところ、意見は多岐にわたり、“ここがこうでないと絶対にダメ”というポイントが数量的に特定できなかったのです。これは何を意味するのでしょうか?

 先ず、“好きであれ、嫌いであれ”非常に注目度が高いデザインだということが言えます。少なくともこの車種が街中を走っていた場合、「おや?」と思わせるだけの吸引力は持っています。また、改善要望の内容が一定でないということは、そのデザインに対して「ダメだし」をしているわけではないと解釈できます。だんだん目が慣れてくれば魅力に感じる、そのような可能性を持っていると判断できるわけです。当時は、リサーチによる客観的な情報を提供する立場の人間として、これら2点での改善が求められていること、加えてどこをどう直して欲しいという意見を多い順にリストアップしてクライアントに報告しました。さて、実際に仕上がった車は、テールランプもドアミラーも確かに手が加えられていましたが、ごくわずかの手直しでした。注意深く見れば分かる、というレベルのデザイン変更でした。後日談として、開発担当としては絶対に当初のデザイン案でいきたいという強い思いと絶対にいけるという自信があったと聞きました。自社のリサーチ部門の顔を立てながら、自分達の感性や思いを具現化した例といえます。この車種は2004年に投入されて、今でもモデル別売上の上位20位以内にコンスタントに入っています。

 このように、商品開発にはリサーチデータを注意深く読み込んで確実に歩みを進める場合と、開発者の感性と情熱を大切にすることで成功する例もあります。但し、使い間違えないのない限り、リサーチは多くの有用な情報をもたらしてくれます。“売れる新商品開発”をするために、先ずは市場の出来事や生活者の行動を注意深く観察・分析すると共に、リサーチの役割と可能性を充分に理解した上で必要なステップを踏んで成功商品を世の中に送り出してください。

 



[*]前へ 

▲上へ
マーケティングリサーチのスペシャリストトップページ