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意識調査が示唆する日本の消費者意識

 調査結果全体を俯瞰してみると、バブル経済崩壊以後20年にわたって起こった消費マインドの変化が、一昨年のリーマンショックや今年の春に表面化したヨーロッパ諸国の財務危機を経て更に冷え始めているように思えます。そして、消費マインドの冷えは将来不安に対する生活防衛意識の高まりを背景にしている事がはっきりと窺えます。但し、生活実感や消費態度、また、生活防衛意識は特定のグループ間、例えば職業や所得で違いが見られ、必ずしも生活者全体に言える事ではないようです。

 詳細は調査結果の要約で触れますが、最近の経済環境を反映してか“自営業者”におけるマインドの冷えや生活防衛意識は非常に高く、一方で、高額所得者層においてそれほど深刻でない姿が散見できます。

 



消費意識調査の結果

◆ 生活実感

 「以前と比較して生活が低下したかどうか」について回答してもらったところ、“どちらとも言えない”という回答が44%あるものの、回答者全体の43%が“以前に比べ生活が低下した”と答えており、生活者の生活実感は益々低下しているようです。生活実感の低下は収入の減少との相関が高くなっており、また、節約意識の高まりを呼び込むと共に、全体の半数近くが貯蓄をしていない実態の背景となっています。

 

 

◆ 将来不安材料

 将来に不安を持っている回答者は、8割もいます。以下の表は将来の不安要素を具体的に示したものですが、健康、家族の介護、政治動向、そして地球温暖化を抑え、トップ10の不安要素の6つが経済関連の項目となっており、現在の生活者心理を色濃く反映しています。

 赤文字:経済関連、青文字:生活関連、緑文字:政治・社会関連)

 

◆ 買い物行動変化

 “衝動買い”や“買い物1回当たりの金額”、“買い物の頻度”が減少し、同時に“買い控え”や“通販/ネット販売の利用”が増加傾向にあることが読み取れます。つまり、意識して「買い物を抑えている」生活者の姿が浮かび上がってきます。

 また、ローンの利用は65%が“変わらない”としているものの、30%の回答者が“減った”と答え、将来を踏まえた生活防衛の一面が垣間見られます。

 

 また最近の買い方の変化をより具体的に見てみると、増えたものとしてスーパーやコンビニのPB商品の購入、セルフガソリンスタンド、省エネ商品の購入、そしてディスカウントストアの利用があり、逆に減ったものとしては、外食費、理容室・美容室の使用、デパート、預金、趣味にかける費用、国内旅行、そしてブランド品の購入などが挙げられています。

  

◆買い控え

 買いたいけど買わずに我慢しているモノには、家電/AV機器、ファッション商品、趣味関係、国内旅行、家具/インテリア製品、そして海外旅行があります。

 我慢している理由としては、“直面する経済的理由”が60%と一番大きいものの、次に“将来の蓄えに備えて”が21%、また、14%が“なんとなく”と答えており、社会全体の消費マインドの冷えを反映して、なんとなく買わなくなってきている生活者の姿も垣間見られます。この傾向は高額所得者層でも見られ、現在のような経済環境化で自分だけが派手に消費をする事へのためらいが感じられます。

 

◆ 品質/ブランド&メーカー vs. 価格のトレードオフ

 そして、物品やサービスの購入に際して、生活者は「価格」とブランドやメーカーとのトレードオフは許容するが、品質に対する妥協には抵抗のある意識が窺えます。特に、高額(医療、家電/AV機器、住居、乗用車、そしてインターネットやパソコン)な商品に関して顕著です。

 

 

 

◆ 衝動買い

 半数以上が以下のグラフに見える商品を衝動買いしており、消費マインドが冷えているにもかかわらず、衝動買いが一定のレベルで起きていることが窺えます。個体差はあるでしょうが、大量消費を経験した社会においては、衝動買いは消費マインドの中に植えつけられてしまった、後戻りできない人間の欲求(欲望)のように思えます。

 

 



【属性間の差異】

◆ 自営業者のマインド

 他の属性グループと比較して、“自営業者”は、買い控え、買い物1回当たりの購入金額や買い物頻度の低下、そしてローン使用の減少、また具体的な項目においても外食費を含め全ての項目で全般より高い“減少率”を示し、厳しい現実が見て取れます。ここに日本の中小企業が苦しむ実態の一面が表れている様に思えます。

◆所得間格差

 生活実感指標(生活実感、節約意識、収入の増減、貯蓄、将来不安)の全ての項目において世帯収入の違いにより顕著な差が見えます。特に、 300万円以下のグループでは買い物の仕方においても“減少した項目”が多く、特に減ったものとして、預金、コンビニ&ファストフード店の利用、そしてタクシーや高速道路の利用、また医療費などがあげられています。また、品質/ブランドやメーカーと「価格」とのトレードオフでは、非常に明確に“価格重視”が見て取れ、これらの背景には“直面する経済的理由”があると思われます。

□ 高額所得者層

 所得層の2極化が消費マインドの2極化を作り出している現状がはっきりと見て取れます。

◆ 結論

 今回の調査では、“消費を科学する”所まで踏み込めませんでしたが、世間で言われている消費の実態が改めて浮き彫りにされたと思います。1年前の様々なマーケティングレポートを見返してみると、「ただ安いものを消費するのではなく、ライフスタイルへのこだわりや、環境意識、そして安全性重視の傾向が強まる」との記述が多く見られましたが、この調査結果を見る限り、想像した以上に高まる生活防衛意識を背景に日本人の消費マインドの冷えが進んでいるように感じました。

 但し、これらはあくまでも生活者の『買い方意識の変化であり、限定された数の生活者が本当にモノを買い難くなったことを除き、消費は確実に行われている』と考えます。確かに、衝動買いや1回のショッピングで支出する金額が減ってきたとはいえ、生活必需品の購入量が市場全体で減少するほどの地滑りは起きていません。消費の中身が変化してきていることは間違いないでしょうし、価格と品質の関係をより慎重に見極める生活者像が浮かび上がりましたが、同時に、生活が厳しい時代にあっても“心を豊かにする付加価値を商品に対し求める”生活者像が窺えました。また、低所得者層のマインドの冷えを解消する制度政策面での革新が早急に求められる事を改めて実感させられました。

 

 



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